ハリウッド全力の怪獣&ロボ映画 『パシフィック・リム』


最近休日といえば、子供と遊んだり家族で何処かへ出かけるかだったりと、いわゆるパパらしい過ごし方が多くなりました。
自宅のパソコンを触る事もめっきり減ったし、映画を観に行くような機会もなかなかありません。
これも家族と幸せに暮らせてる証だし、趣味にうつつを抜かしてはいられないのもやむなし。

が、夏休みシーズンがやってきて、妻は子供たちと一緒に実家へ。
僕は夏恒例の短期一人暮らし状態になりました。

そして巷では『パシフィック・リム』『スタートレック イントゥ・ダークネス』(*1)と、面白そうな映画が次々公開というじゃありませんか。
今こそ土日に映画を観に行くチャーンス!

……という事もあって、先に公開する『パシフィック・リム』を観に行こうかなー、どうしようかなーと思っていた時。
いつも出勤前に観ている『めざましテレビ』で、『パシフィック・リム』プロモーションのため来日している、同作の監督ギレルモ・デル・トロへの取材の様子が取り上げられていました。

『パシフィック・リム』が怪獣や巨大ロボの登場する映画だというのは予告を見て知ってはいたのですが、番組によるとこの監督は日本のサブカル大好きな重度のオタクだとの事。
鉄人28号の頃から日本のロボットアニメ大好き、ウルトラマンシリーズも大好きというから、はっきり言って日本人と比べても僕ら30代後半世代より“うわて”のオタクです。
そういう人が作った怪獣&巨大ロボもののハリウッド大作映画となると、うーん、観てみたくなってきたぞ!

さらに番組では、男性リポーターがデル・トロ監督、菊池凛子(*2)、芦田愛菜(*3)の3人を引き連れてお台場の観光案内をしたのですが……

「ガンダムフロント東京」では、大量に展示されたガンダムのプラモデル群にデル・トロ監督興奮。
そこで男性リポーターが
「僕は(『パシフィック・リム』に登場するロボットの中でも)チェルノ・アルファが好き」
と発言すると、監督はニヤリとして拳を上げ、2人で拳を付き合わせ意気投合。
「チェルノ・アルファはザクがモデルなんだ」
「そうなんですか!」
と男二人がオタク会話で盛り上がる傍ら、女優2人は放ったらかし(笑)

さらにダイバーシティ東京前の等身大ガンダムを観に行くと、遠くにガンダムの後ろ姿が見えてきた時点で、デル・トロ監督は興奮してダッシュで駆け寄り、ガンダムの正面へ回り込む。
やっぱり女優2人は置いてけぼり(笑)
そして巨大なガンダムを見上げながら、感動で目を輝かせ、口元を押さえ、しばし絶句
リポーターに感想を聞かれた監督は、こう答えました。
「ファット・オタク・ヘブン!(太ったオタクの天国だ)」

ちょっとこれ、『キル・ビル』以来の、いや『キル・ビル』の時より何倍も、「監督が面白い人すぎて映画観たくなる」パターンですわ。


そんなわけで、前置きが長くなりましたが、3D吹き替えで観てきました。
概ね満足、楽しめました!


序盤で舞台設定がさらさらっと語られます。
ある日突然、海底の時空の裂け目から現れた“怪獣”の襲撃を受ける人類。
(ちなみにこの怪獣、劇中で何と呼ばれるかというと、まんま“カイジュウ(KAIJU)”です)
なんとか倒したものの、以後度々現れるようになった怪獣に対抗するため、人類は各国協力し合って巨大人型兵器“イェーガー”を建造。
以後、次々出現する怪獣とイェーガーとの闘いが続いていた……という設定。

さて、このイェーガーというロボットの操縦方法ですが、神経接続して脳をシンクロさせて闘います。

人類を襲う謎の巨大生物に巨大ロボットで対抗、しかも脳をシンクロさせて操縦って、どこのエヴァンゲリオンだと最初は思いましたが、
「パイロットは2人いて、2人が息を合わせないと動かない」
という所が斬新。
「1人だとパイロットへの負担が大きすぎるので2人で操縦し、1人が右脳役、もう1人が左脳役となる」
という、分かるような分からんような理屈ですが、その狙いはもう戦闘中の
「2人でヤツを倒すんだ!」
というセリフを聞けば歴然。
とにかくアツい演出効果を狙ってのことでしょう。

そう、これは個人的にとても好感を持った所なんですが、アツい展開が多い!
男の子大喜びのパイロット搭乗→ロボ起動→出現のシークェンスとか。
ロボと怪獣の闘いは殴り合い・取っ組み合いのプロレスが基本、そこらのトラックやらタンカーやらを掴んで凶器攻撃、なぜか最初からは使わずここぞという所でチェーンソードなどの必殺武装を起動、しかも使う時は叫びながら!(笑)とか。
日本のアニメや特撮への愛がひしひしと伝わってくる、何処かで見たような王道展開と、ハリウッド的なアメリカ万歳・人類万歳感をうまくミックスした、アツさ満載のバカ映画(褒め言葉)です。

ところでこの映画、公開前から制作側が
「吹き替えの声優はタレントではなく本業の声優を使う」
と宣言していた事が、ネットで話題になりました。
という事は日曜洋画劇場チックな、違和感のない吹き替えを期待できるなぁ……と思っていたら。

○代表作『新世紀エヴァンゲリオン』綾波レイ役の林原めぐみ

○代表作『機動戦士ガンダム』アムロ・レイ役の古谷徹、シャア・アズナブル役の池田秀一

○代表作『北斗の拳』ナレーション及びザコ敵役の千葉繁

など、“アニメでも有名”な人が集まりすぎていて、個人的にはちょっとクドく感じてしまいました。
もちろんみな素晴らしい声優の方々なんだけど、
「ほら〜アニメファンへの大サービスですよ〜」
っていう狙いがあからさま過ぎというか。
せめて菊池凛子の吹き替えは菊池凛子にやらせようよ。
いくら演技がうまい本業の声優さんでも、菊池凛子が林原めぐみ声で喋るのだけは違和感凄いよ。

あと、アツい展開が多いと書きましたが、その副作用ともいうべき問題が。
中盤で超アツい闘いが繰り広げられ、うひゃー凄かった満足だわーって所で、次の敵の出現が知らされる。
てっきり今日が最終回だと思って興奮しながら観ていたアニメで、番組の最後に
「いよいよ来週からラスボス編だ!」
って言われて、
「え……」
ってなる感じ。
もう今のがラストバトルでいいじゃん、これ以上やってもクドくなるし、さっき以上にアツくするのって無理っぽいし……
と心配しながら観ていたら、その心配はまあまあ的中。


そんなかんじで、ハリウッド映画らしい、しかも制作側がそれで良しと割り切ってるから余計に、大味さが目立つ作品ではあります。
でも、
「日本人がやりたかった、でも日本ではできなかった」
ハリウッド全力の技術と2億ドルの制作費と日本オタク文化へのオマージュが目一杯詰め込まれた本作。
日本人こそ観ておくべき作品と言えるでしょう。


全体的に大味なこの作品でただひとつ、繊細で感動的だった要素を挙げておきましょう。
それは、大人顔負けのプロ女優、芦田愛菜の演技。
怪獣に怯え泣き叫びながら走るシーンがあるのですが、そのカットに切り替わって1秒で心を鷲掴みにされました
いきなり自分の娘の事を思い出して涙出そうになりました。
どうせチョイ役だと思ってたのに、はからずも芦田愛菜の凄さを再認識。
そんな芦田愛菜を起用する判断ができたのも、監督が日本をこよなく愛する人だからかもしれません。


日本全国の男の子および“元”男の子たちに、本作オススメです。
ファット・オタク・ヘブン!



(2013.08.10)


*1.『スタートレック イントゥ・ダークネス』
J・J・エイブラムス監督によりリブートされた人気SFシリーズ『スター・トレック』(2009)の続編。
日本での劇場公開日:2013/08/23。

*2.菊地凛子(きくちりんこ)
1981年01月06日生まれ。日本の映画女優。
2006年、映画『バベル』で聾唖の女子高生を演じ、アカデミー助演女優賞を含む複数の映画賞にノミネートされた。
『パシフィック・リム』では女性パイロット訓練生・森マコを演じる。

*3.芦田愛菜(あしだまな)
2004年06月23日生まれ。日本の子役、タレント。
2007年に3歳で芸能界に入り、2010年テレビドラマ『Mother』に出演して、第65回ザテレビジョンドラマアカデミー賞新人賞を受賞。
2011年3月にテレビドラマ『さよならぼくたちのようちえん』で日本のドラマ史上最年少初主演を務めた。
同年4月にテレビドラマ『マルモのおきて』で連続ドラマ初主演、ゴールデン帯の連続ドラマ史上最年少での主演となる。
同年5月に『マルモのおきて』で共演した鈴木福と犬のムックとともに役名ユニット「薫と友樹、たまにムック。」として同ドラマの主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」でCDデビューをした。
『パシフィック・リム』では幼少期の森マコを演じる。



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