僕が好きなゲームのジャンルはシューティングで、好きな映画や小説のジャンルはSFです。
そしてシューティングゲームのストーリー・世界観設定にはSF的なものが多く存在します。
そもそもシューティングゲームをゲーム性という面から見ると
●自キャラは上下左右自在に画面内を移動できる
●自キャラは画面上方もしくは右方向へ向けて“弾”を発射し、敵キャラを攻撃できる
●敵キャラが撃つ“弾”や敵キャラそのものに自キャラが触れるとミスになる
といったところが一般的な特徴となりますが、弾を撃って空間を自在に移動できるといえば飛行機や宇宙船、それも映画『スターウォーズ』に出てきたような宇宙戦闘機とイメージを結び付け易いため、SF的なストーリーと相性が良くなったのでしょう。
そんな訳でSF的ストーリーや世界観を持ったシューティングゲームが大好きな僕ですが、製作者側もやはりそういう人が集まって創っているのか、無駄に凝りまくってる作品もいくつか存在しています。
今回はそういった作品のいくつかを紹介していきましょう。
まずこういう話ではずせないのは『レイフォース』シリーズ。
1993年にアーケードゲームとしてタイトーから登場した『レイフォース』はメカニカルで硬派なグラフィック、自機の眼下で繰り広げられるドラマチックな演出で多くのファンを生んだ名作です。その後『レイストーム』『レイクライシス』といった続編も登場しました。
バックストーリーを要約して紹介しましょう。
A.T.B.S.(原子配列操作による物質生成システム)の完成によって、人類は不要物から有用な物質を生成する術を得た。有史以来、常に争いの種となっていた資源問題が解決する。
さらに全世界のコンピュータネットワークを管理するシステム“Con-Human”の完成は多くの問題を解決し、更なる飛躍を人類に約束した。
人類は機械文明の恩恵を称え、年号をM.C.(Machinery Century)と改定。
M.C.0108
“Con-Human”は突如、人類による一切の操作・命令を拒否。
そして“Con-Human”による無言の大量殺戮が開始された。
さらにシステムは環境を自らに適合させ、いつしか惑星内部の地殻は金属フレームや動力炉へと換えられていた。
M.C.0130
生き残った人類は“Con-Human”の殺戮から逃れるべく、ついに母星を脱出した。
M.C.0183
惑星は依然として進化を続けていた。
人類に対する“Con-Human”の殲滅戦は熾烈を極め、人類は存亡の危機に立たされる。
“Con-Human”の完全破壊を決意した人類は第一次惑星攻略戦に臨むが、敵の強大な戦力を前に後退を余儀なくされた。
M.C.0185
人類は残存兵力の全てを投入した第二次惑星攻略戦“OPERATION RAYFORCE”を発動する。
この作戦は残存艦隊を陽動に用いて小型機動兵器を惑星に降下させ、中心核まで侵入し“Con-Human”を破壊するというもの。
降下には“ROCK-ON LASER”による単独広範囲攻撃能力を備えた汎用型攻撃機RVA-818 X-LAYを投入する事となった。
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美しい軌跡を描いて敵機を追尾するロックオンレーザー
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眼下に敵艦隊!
だが前方の敵と交戦中の模様……
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前方にいたのは自軍の艦隊だった。
自機を惑星へ降下させるための囮として、味方の艦隊は消滅してゆく……
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このゲーム最大の特徴は、当時としては斬新だった
「自機より低い高度にいて通常ショットが当たらない敵に対しては、照準を合わせることで“ロックオン”して自動追尾攻撃=“ロックオンレーザー”によって破壊できる」
というシステムです。
低高度に見える敵を上昇してくる前に破壊できるという戦略性もさることながら、曲線を描きつつグラデーションがかった長い尾をひいて敵機へ向かってゆくレーザーの美しいグラフィックは相当なインパクトがありました。
ただし一方で
「レーザーが曲がる訳ねーだろ!」
という思いも頭をよぎるのですが、まあそこはそれ、ゲームですから……
……なんて思ってたら、後付けながら
「ロックオンレーザーっていうのはあくまで俗称で、本当は荷電粒子ビーム(*1)。だから曲がる。」
という設定が公開されたのです。
なんという屁理屈!
でもそれがイイ!
個人的に、SFというのは“屁理屈の美学”だと思っています。
「まあゲームだから」
で済まさず何とか理屈をこじつけちゃう所が好きです。
また、自機に搭乗しているパイロットはサイボーグ化され人格を失った女性という設定です。
有人機動兵器は人間の反射速度の限界や搭乗者の肉体保護のため性能を最大限発揮できず、敵無人機との戦いに敗北していた。そこで搭乗者をサイボーグ化し、脳を直接機動兵器のコンピュータに接続することで人間の反射速度の限界を超え、20Gの加速にも耐えられるようにしたというのです。
暴走した機械を破壊するため、最後の希望を“機械化した元人間”に託さなければならないという皮肉に満ちたシチュエーションです。
凝っているのは裏設定だけではありません。
2面後半、眼下に敵本星(元々は人類の故郷)が見えてくるとともに、軌道上の敵艦隊が視界に入ります。
敵艦隊が前方の何かを攻撃しているのが見えます。画面がスクロールしてゆくと、攻撃を受けているのは陽動のために配置された自軍の艦隊だと解ります。
たった1機のプレイヤー機に希望を託し、沈んでゆく自軍の艦隊……
この演出は、プレイヤーが自機を操作して戦闘している最中に眼下で繰り広げられるものです。
僕が常々思っている事ですが、こういう演出を「プレイヤーが操作できる状況で」見せる事こそがゲームとして重要な所だと思います。
これをムービーでやってしまったら、それがどんなに美しく迫力満点の映像になったとしても、それはただの動画であって、ゲーム演出ではないと思います。
操作できる状態だからこそ、プレイヤーはその世界で起こる事象1つ1つを我が身の出来事と感じ、感情移入できるのです。
このゲーム、最後は“Con-Human”とともに母星を破壊してしまう事になります。
生き残るために故郷を破壊しなければならなかった人類は、勝利と引き換えに帰る場所を失ってしまったのです。
そして母星の破片とともに、システムダウンした自機X-LAYが漂う姿を描くエンディング。
どこまでも皮肉が効いていました。
先に触れた通りこのタイトルはその後シリーズ化しています。
2作目『レイストーム』は前作とは全く世界の異なるパラレルワールドでの話となっていますが、3作目『レイクライシス』は時代設定として『レイフォース』よりも遡るM.C.0108、“Con-Human”が暴走に至った背景を描いたものとなっています。
舞台は宇宙ではなく、コンピュータネットワーク上のバーチャルリアリティ空間での戦闘。これもまた燃えるシチュエーションでした。
さて、まだ子供だった僕が最初にSFシューティングの魅力に惹かれるきっかけとなったのが、かの有名な『グラディウス』『沙羅曼蛇』シリーズ。
アーケードから様々な家庭用ハードに移植されており、1985年の1作目から現在に至るまで続編が創られているコナミの伝統的シリーズです。
このシリーズのプロローグストーリーは基本的に毎回
惑星グラディウスにバクテリアン軍の侵略の手が及ぼうとしていた。
そこでグラディウスを危機から救うべく、超時空戦闘機ビックバイパーが飛び立った。
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みたいな感じで非常にシンプルなのですが、背景や敵のグラフィックが大変バラエティに富んでいます。
例えば火山弾が吹き上がる山岳地帯での敵機との戦闘であったり、何か巨大な生物の中のようなグロテスクなステージで奇怪な生物を倒しながら進んでいったり、モアイ像がたくさん設置されていると思ったらそいつらが一斉に口を開いて攻撃してきたり……
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『沙羅曼蛇』の1面ボス、ゴーレム。
巨大な脳味噌に目玉と触手が生えているという強烈なデザイン。
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メカと生物、さらには超自然現象。
様々な形で自機を襲うバクテリアン軍とは一体何者なのか?
言葉で語らずとも、映像によって語られる世界観に強く想像力をかきたてられました。
特にシリーズ2作目『沙羅曼蛇』は、1986年当時としては斬新で豪快なグラフィック、美麗で神秘的なサウンド、合成音声喋りまくりのカッコよさ、そして強烈なインパクトを放つボスキャラの数々にシビレたものです。
また比較的新しい作品としては、2004年に発売された『グラディウスX』がお勧めです。ゲームとしてもよく出来ているし、ドラマ性では個人的にシリーズ中最高峰だと思っています。
ドラマ性といっても、しょうもないムービーがダラダラと入るという事ではないのでご安心を。これもまた「ムービーにではなくゲーム世界に」感情移入できる演出となっています。
さて、そろそろこのタイトルを挙げないと黙っていられない方も多いでしょう。ええ紹介しますとも。
『メタルブラック』。
アーケードゲームとして1991年にタイトーから発売された作品で、マニアの間ではカルト的人気を誇る名作です。
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ゲームスタート直後。
背景は全面的に砂漠化し死の星と化した地球。
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1面ボスと自機が互いにビームエネルギー開放を行った瞬間。
ビーム干渉によるエネルギーボールが発生し始めている様子。
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パリーン! という耳障りな音とともに、まがいものの月の殻が割れて2面ボスが姿を現す。
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西暦2042年
木星軌道に出現したネメシス(*2)によるオールトー干渉(*3)で、隕石群が地球に降り注いだ。これに乗じて飛来した地球外知的生命体の侵略を受け、地球文明は壊滅の危機に晒されていた。
地球軍は彼らの圧倒的なビーム兵器により打ち負かされた。そのビーム兵器のエネルギーとなる物質、科学者達はそれをニューアローン(ニューロン)と称した。
地球軍はニューロンをエネルギー源とし、彼らと同等の能力を持つ機体“ブラックフライ”を開発。2万機のブラックフライによるネメシス彗星核侵攻で外敵の一気殲滅を図る反抗作戦、プロジェクト・メタルブラックを起案。
だが地球政府は平和という名の妥協を選択した。
プロジェクト・メタルブラック永久凍結。
地球は死に、静寂の時を迎えようとしていた。
その時、ジョン・フォードにより強奪された1機のブラックフライが飛び立った。
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ゲームスタート時点で地球は既に死の星。
政府は外敵との停戦協定を締結したところであり、単独外敵との戦闘を始めたジョン・フォード=プレイヤーは政府にとって国家反逆者扱い。
いわば、このゲームは絶望から始まるのです。
自機は空間中に漂うニューロンと呼ばれる物質を大量に集めるとパワーアップし、これを全て使い尽くすことで一時的に強力な極太ビームを放つ“エネルギー開放”と呼ばれる攻撃を行うことができます。
一方でボスクラスの敵も同じくエネルギー開放を行ってきます。
互いのエネルギー開放がぶつかると、ビーム干渉によるエネルギーボールが発生。威力の劣る方が押し負けてエネルギーボールの直撃を喰らい絶大なダメージを被ります。
自機や敵ボスの攻防が、そのまま演出へと昇華されている好例です。
2面では背景に月が見えています。
ところがステージ終盤で視界にもう1つの月が入ってきます。
2つの月。これは幻覚か?
困惑するプレイヤーの眼前で、突如一方の月にヒビが入ったかと思うと、偽の月が割れて中から2面ボスが登場します。
こんな調子で、各ステージともシュールでショッキングな映像が続きます。
まるで敵はプレイヤーに対し、物理的な攻撃だけではなく精神攻撃をも行っているかのようです。
あのステージのあの場面は物理現実なのか、それともパイロットが見ている幻覚なのか? 解釈が分かれ、プレイヤー間で何度も議論された場面がいくつもあります。
ラスボス・Ωゾーン(オゾーン)戦では背景に猿人が描かれます。
Ωゾーンにダメージを与えてゆくと次々に背景の場面が変化します。石斧を持った原始人。発達してゆく文明。戦争。大量のゴミ。
時間の証人たる猫が見えた次の瞬間、Ωゾーン崩壊とともに全てが閃光に包まれ、そして闇へ。
次の瞬間、ナイフで切り裂かれたかのようにパックリと割れる地球の映像が現れ、たちまち消える。
次に夕日が沈む海の場面。
エンディングメッセージ。
Was its phantasm the last attacking or its last moments.
And was this for real or was I dreaming.
Nobody knows yet.
(幻は最後の攻撃か、それとも最後の瞬間か。あれは現実だったのか、それとも夢だったのか。まだ誰も知らない)
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なおΩゾーン破壊に失敗した場合は別パターンのエンディングが流れます。
地球から大量のブラックフライが飛び立つ映像とともに、次のメッセージ。
The death of one soldier caused a coup of the military.
Twenty thousand mass produced "BLACK FLY" flew into the sky area of "NEMESIS"
(一人の兵士の死は、軍のクーデターを引き起こした。2万機生産されていたブラックフライは全機、ネメシスに向かい飛び立って行った)
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なぜラスボス戦で人類の歴史が語られるのか?
なぜラスボスを倒すと地球が割れる映像なのか?
俗に“バッドエンド”と呼ばれる、2万機のブラックフライが飛び立つエンディングの方が物語としてはグッドエンドなのか?
様々な解釈が生まれ、ファンの間で議論が繰り返されました。
一説では、Ωゾーンとはガイア(*4)であり、ガイアを破壊することは地球を破壊することと同じなので、ジョン=フォードは結果的に地球を破壊してしまったのだと言われます。
ということは、ジョンがΩゾーンを破壊できなかったとしても、2万機のブラックフライが結局は地球を破壊する結末に繋がることになります。つまりどちらの場合も結局バッドエンドということになります。
なお、ジョンは自らの意思でブラックフライを強奪したことになっていますが、政府が停戦協定を結んでしまったことに軍部は不満だったという話もあり、実はジョンの行動も軍部からの指示によるものだったとも言われています。
ところが実はジョンはネメシスを攻撃してはならないことに気付いており、軍に従ったフリをして実は別の敵と戦ったというような話もあったと思います(うろ覚え)。
何はともあれ、想像を広げて様々な解釈をすることができる。
そんな奥深い世界観を持った数少ない作品がこの『メタルブラック』です。
ほかにも魅力的な世界観を持った作品はありますが、今回はこの辺で止めておきます。
これを読んでSFやシューティングゲームに少しでも興味を持ってくれる方が増えると嬉しいですね。
(2006.03.06)
(更新2013.03.30)