コラム0149:名古屋ロケ! ハリウッド忍者映画『ハンテッド』

■Welcome Japan
以前より友人にすすめられていた映画『ハンテッド』を観ました。
噂では「日本を誤解しまくったハリウッド忍者映画」という事で、実は僕、そういうの結構好きなんですよね。
最近ではめっきり見かけなくなったこのジャンルですが、今回ご紹介する『ハンテッド』はどうやら1995年に製作された作品。
最大の見所は、舞台がなんと名古屋だという事。名古屋市民なら爆笑間違いなしという事で、けっこう期待して観ました。
■Welcome Nagoya
まず冒頭シーン。映し出される舞台はいきなり久屋大通り。
仕事で出張に来ていたアメリカ人・ラシーヌ(ジョン・ローン)が登場。仕事仲間と別れた彼はホテルへ向かいます。
名古屋城の脇を通って、やって来たホテルとは“ホテル名古屋キャッスル”。
もう名古屋案内番組としか思えない映像の連続です。これが本当にハリウッド映画でしょうか。
ホテルのバーで知り合った女性・キリナと一緒に酒を飲むラシーヌ。
このキリナという女性、一応日本人という事らしいですが、たまに口にする日本語がやけに不自然な発音で、どう見ても中国人くさいんですがそれは禁句です。
上機嫌なラシーヌはキリナをデートに誘います。
ラシーヌ
「よかったらこれから文楽を見に行かないか。えーと、ほら、屋外でドラムを叩く……ティーコを。」
太鼓のことですね。
そして2人は太鼓のパフォーマンスを観に出かけます。
どうやら日本のホテルの庭では、夜な夜な太鼓のパフォーマンスが繰り広げられている事になってるらしい。けっこう見物人が集まっているのですが、やはり夜中に太鼓イベントというのはどうにもこっけいです。
ラシーヌが鼻の下を伸ばしてデートしているその時、ホテル名古屋キャッスルに怪しい男たちが侵入します。
太鼓のドンドコドンドコという音をバックに、男たちが忍び込んで怪しげな企みを話し合う様子はなかなかの緊張感で、否がおうにも盛り上がってきます。
そう、実はこの映画、ただのキワモノ爆笑映画ではなく、けっこう演出効果がいい味出してるんです。
さて、この男たち、暗い部屋の中で手裏剣を準備し、黒ずくめの格好に着替えます。
そうです、こいつらは忍者なのです。
キリナを部屋に送り、ついでに自分もキリナの部屋に入ってゆくスケベ男ラシーヌ。
一方、壁を這って来て窓越しに2人の様子をうかがう忍者。何してるんだアンタら。
そんな事などつゆしらぬラシーヌは、キリナに誘われて一緒に風呂に入ります。
部屋のふすまを開くと、そこに登場したのはバカでかいヒノキ風呂。しかもその部屋は畳の敷かれた和室で、果たしてこれを浴室と呼んで良いものかどうか甚だ疑問です。本当にホテル名古屋キャッスルにはこんな部屋が存在してるんでしょうか。
風呂でじゃれあい、やる事もやった2人。
しかしその後、キリナは「もう会うことはない」と別れを告げます。ラシーヌが理由を聞いてもキリナは「言葉では言い表せない」という返事。
やむを得ずラシーヌが部屋を出て行くと、待ってましたとばかりに忍者登場。
忍者
「覚悟はいいな。」
キリナ
「トックノー ムカシニ カクゴハ デキテルワー。」
やっぱり不自然な日本語です。
そんな事には構わず、忍者が刀をかまえてキリナを斬ろうとしたその時。部屋に再びラシーヌが入ってきます。
手裏剣を投げつけられてひるんだラシーヌは、斬り殺されるキリナの姿を見ながら気を失う……
■Welcome ムッシュ
やがて事件現場を訪れた警察。
なんと警部役を務めているのがあの岡田真澄です。
ムッシュ岡田真澄警部は、現場の状況について婦警から話を聞きます。
婦警
「殺されたのはキリナという女性。それから重傷を負ったのがラシーヌという男性です。」
岡田真澄警部
「フランスの詩人かね?」
婦警
「いえ、仕事の出張で訪れていたアメリカ人です。なお、現場からは忍者の手裏剣が見つかりました。」
岡田真澄警部
「ほほう、ホシは忍者か。」
そんな訳の解らない現場検証の後、ラシーヌが意識を取り戻します。
そこは東市民病院。なぜか中国人っぽいハゲのおっさんが院長を務めています。
そして、ラシーヌの病室を武田という男が尋ねる。どうやら彼はサムライの一族の末裔のようです。って、どんな一族だ。
武田は、ラシーヌを襲った忍者が“金城”という名であること、金城は忍者の末裔であるマカト一族の頭領であること、そしてその顔を見てしまったラシーヌは狙われの身になっている事を教えます。
混乱するラシーヌに対し、武田は連絡先のみを教えて去ってゆく。
その後やって来たのが岡田真澄警部。
彼はラシーヌの話を聞いてこう応えます。
「今の日本に忍者などいない。
現代のアメリカが西部劇の時代とは違うのと一緒だ。」
おお、たまにはマトモな事を言うじゃないかムッシュ岡田。
と思ったら、突然背後から矢が飛んできて岡田警部の首を貫通し、彼はバッタリ倒れます。
って、おーい! 天下の岡田さんがそんな扱いで終わり!?
あまりの唐突な展開についていけない視聴者を置いてけぼりにして、たちまち大勢の忍者が病院に侵入し大量虐殺を行います。
忍ぶ気ゼロの忍者たち。
■Welcome パチンコ
病院から脱出したラシーヌはパチンコ屋に入ります。
後を追ってパチンコ屋にやってきた金城は、客を装って実際にパチンコを打ちながら様子を伺います。
しかしラシーヌは、地下足袋(じかたび)を履いてパチンコを打っている不自然極まりない客の存在に気付き、タクシーを呼んでパチンコ屋から脱出。
そしてJR名古屋駅で武田と落ち合い、新幹線みどり号(みどり号?)に乗って忍者の里へ向かったのでした。
とまあ、序盤部分だけ紹介しましたが、やっぱりこれだけ書くとただのキワモノ映画にしか見えないですね(笑)。
でもこの後、武田が忍者と斬り合うアクションシーンが目白押し。これがカッコいいんですよ。
敵の頭領・金城もめっちゃ男前でかっこいいし。
なかなか燃えますよ、この映画。
ちなみに、主人公であるはずのラシーヌは、物語の中盤以降では最強のサムライ・武田に守ってもらうだけで、目立つのは武田のアクションシーンばかり。驚くほど主人公の影が薄くなります。
それも仕方ないよな、出張で名古屋に来ただけのビジネスマンだもん。
(新規 1998.01.01)
(更新 2017.03.02)
(リメイク 2020.07.16)